Android Usability Seminar 2012

2012年1月28日(土)に開催された「Android Usability Seminar 2012」に参加してきました。
最初思っていたよりもアップルよりで(笑)、研究成果発表という向きがありました。大学教授の講演なので当たり前といえば当たり前でした。さすがに慶応義塾大学の教授陣という豪華なメンバーによるセミナーということもあり、非常に刺激的なセミナーでした。

アップルから学ぶユーザビリティ

講師:山中俊治氏(慶応義塾大学大学院教授、LEADING EDGE DESIGN代表)

Suicaのリーダーは「なぜ、13.5度傾いているのか?」について、実は13.5度に深い意味はない、という話は衝撃的でした。傾ける方向や形状についてはプロトタイプを用意してテストし、手前に傾けることが認識率を高めることがわかり、当時できる限り傾けるようにしたのが13.5度。この13.5度に大きな意味があるのかと思っていたので予想外でした。しかし、全国共通で13.5度として、誰がどこでも迷わないようにしているそうです。13.5度に意味があったのではなく、13.5度に「統一」したことに意味があったのです。

その後、アップル社の製品のデザインについて。1歳半の幼児がiPhoneを使いこなす映像が流れたり面白い講義でしたが、Androidはどこにいった?

最新事例に学ぶユーザーインタフェースの研究

講師:増井俊之氏(慶応義塾大学環境情報学部教授)

フリック入力、連文節変換の否定から入り、Slimeのご紹介。GyaimはスマートフォンのためにデザインしたIMのインタフェースで、かつ日本語入力の特徴に合わせたインタフェースになっています。こういった試みは面白いなぁ、と思います。

正しいI/Fデザイン手法
  • 有能な人が少人数でデザインする
  • シンプルを追求
  • 捨てる勇気
    • 古いものは捨てる
    • 無駄な仕様は捨てる
  • ユニバーサルなデザイン
  • 素人の感想は聞くが意見は採用しない

最新の研究としては実世界GUIRFIDNFCを利用して実世界とAndroid端末を結びつけようというもの。これができれば、名刺にAndroid端末をかざすと詳細情報が見られるような応用が考えられます。

iCloud と Siri に見るサービスデザイン

講師:奥出直人氏(慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科教授)

「デザイン思考の道具箱」という書籍を出版されている。

デザイン思考の道具箱―イノベーションを生む会社のつくり方

デザイン思考の道具箱―イノベーションを生む会社のつくり方

フライパンに温度センサーをつけて料理をサポートする、システムをユーザテストを繰り返しながら作り上げたり、在宅医療のノートや母子手帳の電子化に取り組んでおられました。
これらのサービスを実現するための「サービスデザイン」という手法を研究しており、実践することで成果を出しています。この成果として作成されたサービスは、数分前に渡したばかりなのに利用者が自分ごととして、こうやって使えるのがいいんだよ、と語りだしていた。操作が簡単ということを通り越して、難しい操作でさえ自然に行えるインタフェースは本当に驚きました。

「現場を見て書くことまでの人間関係を築くことが大変」
という言葉が印象に残った。そして、デザイナーやエンジニアは現場に出て実際にどう使われているのか見て欲しい、という。ユーザビリティを向上させる上でどう使われているかを聴くのではなく、見ることが重要なんだな、と感じました。

感想

学術研究の発表から抜粋した資料が多かったので、「Android Usability Seminar」というセミナー名からは少し離れた内容になっていました。皆さん、MacBookでしたし、発表内容もアップル社の製品を分析する内容が多かったですし。
セミナー名と内容が不一致だった点以外は、非常に刺激的なセミナーでした。そして、これだけの豪華なメンバーのセミナーが無料なのはお得感満載でした。

もう寝よう。